もくじ
保障を考える上で必要なこと
保険とは「万が一の事態」に備えるものです。保険に加入していると何かが起こったときに保障を受けることができます。では、その保障とは具体的にどのように考えればいいのでしょうか?
・亡くなったときの残された家族への保障
・病気やケガをしたときの入院費等の保障
・働けない状態になったときの保障
このように受けたい保障によって、加入すべき保険も選び分けなければいけません。今回は、自分が亡くなったときの残された家族の生活保障を目的としている「収入保障保険」について詳しく見ていきましょう。
収入保障保険ってどんな保険?
「収入保障」という名がつく保険ですが、これは被保険者の収入を保障するものではなく、残された家族の収入を保障するための保険です。
最近では、被保険者の収入を保障する生存保障タイプもありますが、この記事では、死亡保障について紹介しています。
例えば夫が一家の収入を支えている場合、夫が亡くなってしまったら、お給料面での収入が途絶えてしまいます。
収入保障保険では、被保険者が死亡、もしくは所定の高度障害状態になった場合に保険金を受け取れる保険です。
保険期間満了まで、お給料のように毎月受け取ることができる(年金形式)ので、その保険金を家族の生活費に充てることができます。
このような仕組みを理解すると、収入保障保険と名付けられたのが納得できますね。
【保険期間】
収入保障保険の保険期間は60歳まで、65歳までといったように決まっています。ですので、これは定期保険の一種であり、期間をいつまでにするかは契約時に決めることができます。
定期保険の一種というものの、保険料は通常の定期保険よりも割安に抑えられています。その理由は、「収入保障保険のメリット」の項で詳しくご説明します。
【保険金額】
受け取れる月々の額は契約時に決めることができますが、金額を多く設定すると保険料もその分高くなります。
【保険料】
保険加入時の契約者の年齢により計算され、保険料払込期間中の保険料は常に一定です。更新もないので、保険料が途中で上がることもなく、加入が早ければ早いほど、安い保険料で大きな死亡保障を準備することができます。
健康状態や喫煙状況によっては保険料がさらに安くなるタイプもあります。また、契約内容によっては、所定の障害状態になった場合は、以降の保険料払込が免除となるタイプもあります。
【特約】
収入保障保険は死亡、もしくは高度障害状態に備える保険ですので、病気やケガに備えることはできません。
しかし、特約を付帯することで、三大疾病やがん、その他の病気に備えられるタイプもあります。
がんと診断されたら、以降の保険料払込が免除されるなど、特約ごとに細かく要件が定められています。
特約を付帯すれば安心ではありますが、その分保険料も上がりますので、その他の医療保険やがん保険に加入するという選択とどちらが家計状況に合うのかをよく考えてみましょう。
収入保障保険のメリット
1.保険料が割安
割安な保険料で大きな保障が準備できるのが大きな魅力の保険ですが、割安なのには理由があります。
通常の定期保険の場合、亡くなるもしくは高度障害状態になった場合、保険期間中であればいつでも同じ金額の保険金を受け取ることができます。
しかし、収入保障保険の場合、保険期間の経過と共に受け取れる金額が徐々に減っていきます。保険会社が将来的に支払う保険金額が定期保険よりも少なくなるため、定期保険よりも安い保険料が実現しています。
また、30年など長い期間の保険契約をする場合、定期保険では10年ごとといったように更新があり、更新時の年齢で保険料が再計算されますが、収入保障保険の場合、保険料が変わらないことも大きなメリットです。
2.合理的に保障を準備できる
子どもが生まれたばかりや小さいうちは、大きな保障が必要だと考えられます。養育費や進学のための教育費等、様々な費用がかかるからです。
しかし、子どもが成長していくにつれ、子どもに必要なお金の総額は少なくなってきます。つまり、一家の主の万が一の事態に備えた必要な保障額は、年々少なくなるということです。
収入保障保険の段階的に保険金が減っていく仕組みは、子どもの成長に合わせた合理的な保険と言えます。
収入保障保険のデメリット
1. 解約返戻金がない、もしくはあってもごくわずか
収入保障保険は定期保険の一種ですので、解約返戻金はないか、あってもわずかなケースが多くなります。保障が不要になったからといって解約して、解約返戻金を老後資金に充てるといったような使い方はできません。
2. 受け取った保険金が課税対象となる場合がある
高度障害状態に陥り保険金を受け取った場合は非課税となりますが、死亡保険金の場合、受け取った額に対して課税される場合があります。
しかし、他の保険の死亡保険金にも同様のことが言えますので、収入保障保険に限ったデメリットではありません。
保険金の受け取り方
受け取り方に特徴のある収入保障保険ですが、年金形式ではなく、一括での受け取りを選べる場合もあります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
■年金形式で受け取る
被保険者の亡くなった(高度障害状態になった)時期によって、受取額が異なります。
〈毎月10万円受け取れる契約の場合〉
保険期間が残り20年間
10万円×12ヶ月×20年=2,400万円
保険期間が残り10年間
10万円×12ヶ月×10年=1,200万円
毎月、一定の金額が保険契約期間中はずっと受け取れるので、家賃や食費など、定期的にかかる生活費に充てることができます。
一定期間、決まった額が受け取れることは、特に小さな子どもがいる家庭には大きな安心になるでしょう。
■支払保証期間がある
被保険者が亡くなった時期によって保険金額が違うということは、契約直後に万が一のことがあった場合には、長期間保険金を受け取ることになり、受取総額も多くなります。
逆に、保険期間が残りわずかな時点で被保険者が亡くなったとき、保険金は少額になるということです。
保険期間満了まであと数ヶ月というときに万が一の事態が起きたとき、その数ヶ月分の保険金しか受け取れないのかというと、そうではありません。収入保障保険には支払保証期間があります。
これは、保険期間内に万が一の事態があった場合、最低何年間分の保険金を支給するという制度で、契約時に設定することができます。
大抵の場合、1~5年の間で決めることができ、その年数に応じた保険金が支払われます。
年数が長くなるほど保険料が高くなるので、子どもの独立、妻の老齢年金支給開始のタイミングなど、保険契約満了間際の家族の状況に応じて設定すると良いでしょう。
■一括で受け取る
被保険者が亡くなった(高度障害状態になった)際の残りの保険期間によって、保険金額が計算されます。
ただし、一括受け取りをすると、年金形式と比べ、受取総額が少なくなり、年金形式の8割程の金額になります。
年金形式の場合、保険金の原資となるお金を保険会社が運用して、その運用益(運用によって得られる利益)が考慮された保険金が支払われます。
対して、一括受け取りの場合、運用をしておらず運用益を含まないため、受取額が少なくなるのです。
例えば、子どもの進学時期と重なってしまった場合など、まとまったお金が必要で、他の死亡保障等では心もとない時などに一括受け取りを検討すると良いでしょう。
受け取り方法の選び方
受け取り方法は2種類ありますが、どちらのタイプを選ぶかは、まずは収入保障保険の保険金以外に受け取ることができる保障がないかを確認してみましょう。
残された家族の生活費を確保でき、その他の支払いなどが滞らないようにすることが肝心です。下記を確認して、受け取り方法を選びましょう。
・生命保険の死亡保障
資産形成を目的とした終身保険や子どもが小さいうちの保障として定期保険に加入していた場合、受け取ることができる保険金はいくらか確認してみましょう。
・遺族年金
一定の要件を満たしている配偶者と子どもが受け取ることができる公的年金の一つです。自分は受給要件に当てはまっているか、当てはまっている場合、いくらをいつまで受け取れるのかを確認しましょう。
・団体信用生命保険(団信)
住宅を購入している人は団信に加入していませんか?亡くなった家族が被保険者として団信に加入していた場合、住宅ローンの残債の支払義務がなくなります。賃貸の人の場合は、収入保障保険の保険金を年金形式で受け取ると家賃の心配が少なくなりますね。
また、団信加入は任意のため、団信の代わりとして収入保障保険を活用することもできます。その場合は、住宅ローンの残債の金額を考慮して、受取金額を決めると良いでしょう。
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収入保障保険の保険金に税金はかかる?
死亡保険金は課税の対象となりますが、保険契約の契約者・被保険者・受取人の関係によって、税金の種類は異なります。
詳しくは下記の表の通りです。また収入保障保険の保険金の場合、受け取り方によっても税金の種類に違いがあります。
収入保障保険の場合、契約者と被保険者が同じで、受取人を配偶者とするケースが多いかと思いますが、その場合は相続税にあたります。
■一括受け取りの場合の税金
保険金を受け取った年の一度限り、課税される場合があります。
相続税の基礎控除 3000万円+600万円×法定相続人の数
死亡保険金の非課税枠 500万円×法定相続人の数
上記は併用することができるので、一括受け取りにおいての課税額はないか、あっても少額となるケースが多いようです。
■年金形式の受け取りの場合の税金
被保険者が亡くなったときと年金受け取り時に課税される場合があります。亡くなったときに課税されるのは相続税で、受け取り時には所得税が課税される可能性があります。
所得税は、年金形式にしたことで保険会社が運用した運用益部分に課税されます。ただし、被保険者が亡くなった時点で相続税の支払い(発生した場合)をしているので、二重課税にならないよう、法律により定められています。
相続税の対象となっていない部分の受取額に対して税金がかかります。所得税は1月1日から12月31日までの一年間の所得に課せられるものなので、その他の所得がある場合は合算して計算されます。
所得税の基礎控除 一律38万円
また、夫を亡くした妻で一定の要件を満たせば寡婦控除も受けることができます。
一般の寡婦の控除枠 27万円
受け取った保険金に対し、該当する控除を除いた金額に課税されることになります。
■収入保障保険は年末調整の対象
一年間で支払った保険料は生命保険料控除の対象となります。会社員などの人は、年末調整のタイミングで会社から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」の「一般の生命保険料」の欄に記入をしましょう。
自営業の人などは確定申告にて申告をしましょう。どちらの場合も保険会社から送られてくる保険料控除証明書が必要となりますので大切に保管しておいてくださいね。
保険金受け取り時の税金はどう決まる?
収入保障保険に向いている人、向いていない人
収入保障保険は、残された家族の生活保障という意味合いが大きく、割安な保険料で大きな保障を確保できるというメリットがあるため、下記のように考えることができます。
しかし状況は各家庭によって異なるので、目安としてお考えください。
〈向いている人〉
・子どもが生まれたばかりやまだ小さい人
・収入が安定していない人
〈向いていない人〉
・独身の人
・万が一の保障を充分に備えられている人
・貯蓄が充分にある人
以上を踏まえ、自分の家庭に収入保障保険は必要かどうかをよく検討してみてくださいね。
頼りになるFPの存在
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おさらい
- 収入保障保険は、保険契約期間の経過に伴い、保険金の受取金額が徐々に減っていく合理的な保険です。
- メリットは割安な保険料で大きな保障を備えられること、デメリットは解約返戻金がない、もしくはあってもわずかなことが多く、資産形成としては活用しづらい等があります。
- 保険金受け取り方法は一括、年金形式が選べますが、受け取り方によって受取総額や税金の種類が変わります。