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遺族年金とは?いつまでにいくら受給できる?

遺族年金とは?いつまでにいくら受給できる?

この記事の早わかり要約

  • 遺族年金は、世帯主にもしものことがあった時に遺族の生活を支える公的年金で、亡くなった人の加入していた年金の種類や遺族の年齢等により、受給内容が決まります。
  • 一定要件に該当する子どものいる配偶者、または子どもは「遺族基礎年金」を受け取ることができます。令和2年4月からの配偶者の受給額は781,700円で、さらに子どもの人数に応じた金額が加算されます。
  • 亡くなった人が厚生年金の被保険者だった場合、遺族厚生年金の対象となります。亡くなった人の年金加入実績に応じた金額を受給することができ、受給期間は受け取る人の年齢等により異なります。

遺族年金とは?

縁起でもない話ですが、もしもに備えることは大切なことです。一家を支える大黒柱が亡くなったとき、悲しみと同時に経済的困難に直面する家庭もあることでしょう。
そんなときに頼りになる公的年金の給付に遺族年金があります。遺族年金とは、亡くなった人によって、生計を維持されていた遺族の生活保障のための年金です。
年金制度は日本独自の社会保障制度として、国民の生活を守るために定められている社会保険のひとつです。
年金と言えば、老後に受け取れる国民年金厚生年金といった老齢年金がまず頭に浮かぶかもしれません。
遺族年金は、まさに国民年金や厚生年金といった亡くなった人が加入していた年金の種類や年金保険料の納付状況が大きく関係してくる制度です。
加入している年金によって、遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類に分類されます。

まずは国民年金と厚生年金をおさらい

遺族基礎年金を知るには、年金の種類とその違いを知っておくことが肝心です。国民年金は、日本国内に居住する20歳以上60歳未満の全ての人に加入義務がある制度です。加入者は下記のように3種類に分類されます。
◆第1号被保険者……自営業、学生、無職の人など
◆第2号被保険者……会社員、公務員など
◆第3号被保険者……第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満の人)
厚生年金は、会社員や公務員など国民年金の第2号被保険者を対象にした制度です。
支払う保険料も受け取る年金額も報酬(給与と賞与の総額)に応じて決まるという報酬比例制度を取り入れており、国民年金に上乗せして支給されます。
従来、公務員の人が対象となっていた共済年金は、平成27年10月に厚生年金に統合されているので、ここでは厚生年金としてお考えください。
共済年金が廃止!?厚生年金と統合されたのはどうして?
遺族年金受給額は、国民年金に加入している人と厚生年金に加入している人とでは、金額に差があります。先ほども触れた通り、遺族年金も公的年金の一つのため、老齢年金と同じように2階建ての仕組みになっています。
自分は遺族年金受給の対象なのか? 子どもは受け取れるのか? と疑問はたくさんあるかと思います。
遺族年金の仕組みは少々複雑ですので、遺族年金の受給資格があるのは誰なのか、いつからいつまでいくらもらえるのか、ということについて一つひとつ整理していきましょう。
また、公的年金には3つの種類があり、老齢年金と遺族年金の他に、病気やケガで日常生活や仕事に制限が生じる際に受け取ることができる障害年金があります。
しかしそれぞれの年金の種類によって、受給資格や受け取れる年金額は異なります。いざという時に私たちの助けになってくれる公的年金制度ですので、その時になって慌てないよう、よく理解しておくことが大切です。
また、公的年金の他にも、自分自身で将来に備えることができる私的年金もあります。あわせて確認しておくと良いでしょう。
公的年金制度の種類はどれくらいあるの?一覧入りでわかりやすく解説

国民年金に加入していた配偶者が亡くなった場合 遺族基礎年金の受給資格

亡くなった人が国民年金の被保険者(第1号被保険者)であった場合、受け取れる年金は遺族基礎年金になります。

【受給資格を持つ対象者】

亡くなった人に生計を維持されていた
・子どものいる配偶者
・子ども

【遺族年金受給(遺族基礎年金・遺族厚生年金)の対象となる子どもの要件】

・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子ども
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子ども
・婚姻していない子ども
障害年金とは?受け取れる金額は?受給の要件と年金受給額を詳しく確認

【生計を維持とは?】

・同居している(別居の場合でも、仕送りをしていたり、健康保険の扶養親族等であったりした場合は該当)
・遺族年金を受け取る人の前年の収入が850万円未満、もしくは所得が655万5千円未満であること
つまり、同一の家計で生活をしていた人で、一定の収入以下であれば、生計を維持されていたと見なされます。
参考:日本年金機構
次に、肝心のいくら受給できるかというところですが、子どもの有無や子どもの人数によって異なります。
受給要件と遺族基礎年金の令和2年(2020)年4月以降の受給額は次の通りです。遺族年金の受給額は毎年改定されますので、必要になった時に改めて確認してみましょう。

【受給要件】

・国民年金の被保険者、または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある人が亡くなったとき(保険料免除期間を含む保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あること)
※令和8(2026)年3月31日までの間は、亡くなった人が65歳未満で、死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないという要件を満たしていれば受給可能
・亡くなった人によって生計を維持されていた配偶者、または子どもの年収が850万円未満(年間所得655万5,000円未満)であること

【受給額】

781,700円+子どもの加算額
子どもの加算額
第1子・第2子 各224,900円
第3子以降 各75,000円
妻と受給対象の要件に該当する子ども1人の場合の受給額を計算してみると、1,006,600円になります。子どもが2人の場合は、さらに224,900円が加算され、第3子以降は75,000円ずつが一人につき加算されます。
遺族年金の受給額は配偶者の受給額が元にあり、そこに子どもの人数分の金額が加算されていくという仕組みになっています。

【受給期間】

遺族基礎年金の受給資格がある期間は、子どもの年齢がポイントになります。いつまでもらえるのか?の答えですが、それは子どもが受給要件を外れるまでということになります。
つまり、子どもが18歳を迎える年度の3月31日を経過するまで、もしくは障害等級1級または2級の子どもが20歳を迎えるまでです。

子どもがいない場合に受給可能な死亡一時金

ここまで見てきて、子どもがいない場合には遺族基礎年金を受け取れないの?と思った人もいるのではないでしょうか。
確かに子どもがいない場合には、遺族基礎年金を受け取ることはできませんが、その代わりとして「死亡一時金」を受け取ることができます。
免除期間を含む国民年金保険料の納付期間が36ヶ月以上ある人が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受給することなく亡くなった場合、その人と生計を共にしていた遺族が死亡一時金を受給できます。
受給者には優先順位が定められており、配偶者、子ども、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順になります。
これは遺族基礎年金を受給できないときに限って受け取れるもので、名前の通り一度だけの受給となります。
受給額は亡くなった人の保険料納付期間に応じて、12~32万円の間で決定されます。受給できる期間は、被保険者が亡くなった翌日から2年以内となりますので、その期間内に忘れずに申請しましょう。
以上を踏まえ、遺族年金にまつわる細かい疑問も見ていきましょう。

Q.妻が亡くなった場合、夫は遺族基礎年金を受け取れるの?

受給可能です。従来、遺族基礎年金の受給資格の対象は妻と子どものみでしたが、平成26年4月1日に制度が改正され、生計を担っていた妻が亡くなった場合、夫も遺族基礎年金が受給できるようになりました。
ただし対象は「子どものいる配偶者」ですので、子どもがいない夫の場合、遺族基礎年金を受け取ることができません。なお、夫の年収要件は850万円(所得655.5万円)未満です。
また、遺族厚生年金は年齢の要件に当てはまる場合、子どもがいない夫でも受給可能となります。妻死亡時に夫の年齢が55歳以上であれば遺族厚生年金は受給できますが、夫が60歳になるまでは支給が停止されます。妻死亡時に55歳以上で、遺族基礎年金受給要件に当てはまる夫(子どもがいる)の場合、この支給停止措置は行われず、60歳以前でも遺族厚生年金を受け取ることができます。

Q.専業主婦だった妻が亡くなった場合はどうなるの?

家計が同一であれば、専業主婦の妻が亡くなった場合でも、要件に該当すれば、夫も遺族基礎年金を受け取れます。
会社員等の夫に扶養されている専業主婦の場合、国民年金の第3号被保険者にあたります。
第3号被保険者は自分で年金保険料の負担の義務は生じませんが、国民年金の受給対象者となりますので、残された夫は遺族基礎年金の受給対象となります。
夫に扶養されているパート勤務の妻が亡くなった場合も、同様に要件を満たしていれば受給可能です。

Q.年金の受給に必要な保険料納付期間が25年から10年に短縮されたけど、遺族年金の場合はどうなるの?

遺族年金の受給に必要な保険料納付期間に変更はありません。2017年8月から開始されている納付期間の改定は、老後に受け取れる老齢基礎年金と老齢厚生年金だけが対象です。
年金受給資格期間が25年から10年に短縮!【2017年8月から】

厚生年金に加入していた配偶者が亡くなった場合 遺族厚生年金の受給資格

亡くなった人が厚生年金の被保険者(第2号被保険者)であった場合、受け取れる年金は遺族厚生年金になります。

【受給資格を持つ対象者】

亡くなった人に生計を維持されていた
・妻
・子ども、孫(18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない者、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の者)
・55歳以上の夫、父母、祖父母(受給開始はいずれも60歳から
遺族基礎年金に比べ、受給対象者がひろがることがわかります。大きな違いとしては、子どものいない妻も年金を受給できるという点ではないでしょうか。
ただし、対象者には優先順位があります。子どものいる妻、子ども、子どものいない妻、夫、父母、孫、祖父母の順になり、順位が高い人が受給者となります。
また、要件に当てはまる子どもがいる配偶者と子どもは、遺族基礎年金も併せて受給することができます。
遺族基礎年金は夫も妻と同じように受給できたのに対し、遺族厚生年金は妻を亡くした夫が55歳未満の場合は受給することができないので注意が必要です。

【受給要件】

・厚生年金の被保険者が亡くなったとき、または被保険者期間中の傷病がもとで初診の日から5年以内に亡くなったとき(保険料免除期間を含む保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あること)
※令和8(2026)年3月31日までの間は、亡くなった人が65歳未満で、死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納期間がないという要件を満たしていれば受給可能
・老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある人が亡くなったとき
・1級・2級の障害厚生年金を受けられる人が亡くなったとき
・亡くなった人によって生計を維持されていた受給資格のある人の年収が850万円未満(年間所得655万5,000円未満)であること

【受給額】

気になるいくらもらえるか?ということですが、遺族厚生年金の受給額は、亡くなった人の年金加入実績に応じた金額になります。
つまり、老齢厚生年金の場合と同様に、給与や支払ってきた厚生年金の保険料によって異なるということです。
かなり複雑な計算式になりますが、具体的な金額を知りたいという人は、日本年金機構のサイトにて確認してみてください。

【受給期間】

遺族厚生年金を受け取る場合は、被保険者が亡くなった時点での受給対象者の年齢や子どもの有無等により受給できる期間が異なります。
■30歳未満で子どもがいない妻
受給は5年間のみ
■30歳以上の妻
子どもの有無にかかわらず、一生涯受給可能
ただし、自身の老齢厚生年金を受給する場合、受給金額の確認が必要です。
例えば、自身の老齢厚生年金よりも遺族厚生年金が上回る場合、その上回った部分が遺族年金として支給されます。逆に下回る場合は、遺族年金相当額が支給停止となります。
■夫死亡時に40~65歳で、要件に該当する子どもがいない妻、もしくは子どもが規定年齢に達し、遺族基礎年金を受給できなくなった40~65歳の妻
これに該当する妻は、遺族厚生年金に加え、65歳になるまで年額586,300円を加算した金額が受給可能。これを「中高齢寡婦加算」と言います。
これは、子どもの年齢により遺族基礎年金を受給できない妻の生活水準が著しく低下しないようにするための制度です。
遺族基礎年金の受給期間が終了し、遺族厚生年金だけの受給になった場合、100万円以上受給額が減ってしまうことも考えられます。中高齢寡婦加算は、そのギャップをなだらかにするための救済措置です。
なぜ65歳までかというと、65歳になると自分の老齢基礎年金が受け取れるようになるからです。また、中高齢寡婦加算は妻だけが加算給付される制度で、妻死亡時の夫は受け取ることができません。
■子どものいない60~65歳の妻
第1号被保険者として保険料を納めた期間が、免除期間を含み10年以上ある夫が亡くなり、10年以上継続して婚姻関係にあった場合、夫によって生計を維持されていた60~65歳の妻は、「寡婦年金」を受給することができます。
受給額は、夫が第1号被保険者であった期間のみで計算した老齢基礎年金の4分の3です。つまり、夫が65歳以降に受け取るはずであった老齢基礎年金の4分の3の金額を受け取ることができるということです。
ただし、夫が既に老齢基礎年金を受け取っている場合や、障害基礎年金の受給権者(年金受給の要件を満たしている人)である場合、妻が繰り上げをして老齢基礎年金を受給している場合には寡婦年金を受け取ることはできません。
寡婦年金は、妻だけが受け取れる年金です。亡くなった夫が自営業等、国民年金の第1号被保険者であった場合が対象となります。
亡くなった夫が、会社員や公務員で第2号被保険者であった場合は遺族厚生年金が受け取れます。遺族厚生年金と寡婦年金はどちらか一方しか受け取れません。
また、先述した死亡一時金と寡婦年金もどちらか一方しか受け取ることはできません。
■子ども・孫
18歳を迎える年度の3月31日を経過、障害等級1級または2級の子どもが20歳を迎えるまで
■夫・父母・祖父母
受給開始となる60歳以降、一生涯受給可能
このように遺族年金は単純に2種類あるということだけでなく、かなり複雑な仕組みになっています。大枠だけでも掴んでおけば、いざというときに慌てずに済むかもしれません。
最後に、ふと疑問が湧きそうな遺族年金についてお答えします。

遺族年金と自分の老齢年金、どちらを選択すればいいの?

公的年金は基本的に「一人1年金の原則」があります。複数の年金の受給資格に当てはまった場合はどちらか一方の年金を選択することになります。
妻を亡くした夫が妻の遺族厚生年金よりも自分の老齢年金の方が多く受給できる場合は、老齢年金を選ぶと良いでしょう。
第1号被保険者の55歳以上の夫で、妻の遺族厚生年金の方が、自分の老齢年金よりも多く受給できる場合は、遺族厚生年金を選ぶと良いでしょう。

離婚した夫が亡くなった場合、遺族年金はもらえるの?

遺族年金受給の要件に、「生計を共にする配偶者」とあります。ですので、離婚が成立していたら配偶者ではなくなるため、遺族年金の受給対象外になります。
ただし、要件を満たす子どもがいて生計維持関係であれば、子どもは受給をすることができます。
その子どもが母親と生計を共にしている場合、父親とは生計を共にしていないので遺族年金を受け取ることはできません。
また、夫に先立たれ遺族年金を受け取っている妻が再婚をした場合、遺族年金の受給資格は消滅します。

遺族年金に税金はかかるの?確定申告は?

遺族年金や障害年金は非課税です。所得税相続税の課税対象外となりますので、遺族年金に対する確定申告は不要です。しかし、その他の収入がある場合は確定申告が必要になるケースもあります。
遺族年金は、残された家族の生活を支えてくれる大切な制度です。亡くなった人や家族の状況、年齢によって、受給期間や内容が変わってきますので、いざというときの生活の保障として内容をよく確認しておきましょう。
そうは言っても、実際の受給額はなかなか計算が難しいものです。
遺族年金という制度があるということを踏まえつつ、貯蓄や保険で万が一の備えが充分なのかをよく検討しておきましょう。
残された家族に必要な保障額を知るためには、ファイナンシャルプランナー(FP)などのプロに相談するのも良いでしょう。
※本記載は、2020年12月現在の税制に基づく一般的な取扱について記載しています。税務上の取扱が税制改正などで変更となることがありますので、ご注意ください。また、個別の取扱等につきましては、所轄の税務署などにご相談ください。

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おさらい

  • 遺族年金は、世帯主にもしものことがあった時に遺族の生活を支える公的年金で、亡くなった人の加入していた年金の種類や遺族の年齢等により、受給内容が決まります。
  • 一定要件に該当する子どものいる配偶者、または子どもは「遺族基礎年金」を受け取ることができます。令和2年4月からの配偶者の受給額は781,700円で、さらに子どもの人数に応じた金額が加算されます。
  • 亡くなった人が厚生年金の被保険者だった場合、遺族厚生年金の対象となります。亡くなった人の年金加入実績に応じた金額を受給することができ、受給期間は受け取る人の年齢等により異なります。

(最終更新日 : 2020年12月23日)

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