もくじ
所得補償保険とはどんな保険?
働けなくなったときの備えには、さまざまな種類の保険があります。今回はその中でも、「所得補償保険」を中心に、どのような備えがあるのかを見ていきましょう。
所得補償保険とは、病気やケガなどが原因で働けなくなり、収入が減ってしまったときに不足分をカバーする保険です。
家族の保障というと、保障の対象になる人(被保険者)が亡くなったときのことをイメージされる人もいるかもしれませんが、この所得補償保険は、被保険者の生死ではなく、収入の不足分を補うための保険です。
保険金額は、被保険者の収入の範囲内で設定します。収入の不足分をカバーする保険のため、実際の収入以上の金額を保険金として設定することはできません。
受け取りの方法は、毎月一定の金額を受け取るタイプがほとんどです。病気やケガなどにならずに保険金の支払いが発生しなかったときには、保険料の一部が戻ってくるタイプもあります。
所得補償保険は、主に損害保険会社が取り扱っている保険です。
所得補償保険の要件
免責期間
所得補償保険には、免責期間があります。免責期間とは、本来なら保険金が支払われる事由が発生しても、その期間内は保険金が支払われない期間のことです。
7日程度の短期間のもの、60日~365日程度の長期間のものがあります。免責期間が明けてから、補償の対象になります。
短期補償タイプと長期補償タイプ
所得補償保険には、大きく2つのタイプがあります。
■短期補償タイプ
1~2年の短期間の間に備えたい人に向いているのが短期補償タイプの所得補償保険です。短期補償タイプは、免責期間が7日程度と短いのが特徴です。支払いの要件は、病気やケガが原因の入院や、仕事が1日もできない状態のときなどに保険金が支払われます。
■長期補償タイプ
60歳あるいは65歳までといったような長期に補償が続くため、老後まで働けなくなった場合に備えたい人向けの所得補償保険です。免責期間も、短期補償タイプと比較すると長く、60~365日程度になっています。
支払いの要件は、病気やケガの為に入院をしている、または医師の指示により自宅療養をしていて全く仕事ができない状態などとなります。一時的な入院による治療ではなく、寝たきりの状態など、全く仕事ができなくなったときに備えたいという人は検討してみると良いでしょう。
注意しておきたいこと
所得補償保険は、どんな理由が原因であっても、働けない状態なら補償が受けられるわけではありません。理由によって、補償の対象から外れてしまうこともあります。
たとえば、うつ病などの精神疾患は対象外になっている保険が多くあります。また、無免許運転や酒気帯び運転などで生じたケガや病気が理由となっている場合、アルコール依存などが原因の場合などが原因で働くことが出来なくなった状態は補償の対象から外れてしまいます。
妊娠や出産などが理由で働けない場合も補償の対象外となります。妊娠出産で働けない場合は、会社員などの人は育児休業給付金や出産手当金で対応しましょう。
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補償が対象外になる事由は、保険会社によって異なります。保険の加入時には確認しておくと良いでしょう。
就業不能保険
生命保険会社が取り扱っている働けなくなったときにカバーする保険として、就業不能保険があります。
就業不能保険は、生活を守ることを目的としているので保障という漢字を利用します。所得補償保険は、自分の収入が減った分(損失分)を補う保険のため、補償という漢字を使います。
保険会社によって、細かな内容は異なりますが、生存時の所得が減ってしまった場合にカバーする保険という面では共通点が多くあります。
生命保険会社、損害保険会社とそれぞれ商品を取り扱っている保険会社は異なりますが、目的は同じと思って良いでしょう。
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収入保障保険
さらに、生命保険会社が取り扱っている保険として、収入保障保険もあります。名前が似ているので、混同してしまうかもしれませんが、内容は全く異なります。
所得補償保険・就業不能保険は、被保険者が働けない状態になったときの収入減を想定しているものです。一方で、収入保障保険は被保険者が死亡・または高度障害状態になったときに遺族に対して、保障するタイプの保険です。
収入保障保険は、自分の収入には関係なく、遺された家族に必要となる金額に合わせて保険金額を決ることができます。それも所得補償保険との大きな違いです。
それぞれの特徴を理解した上で、自分の考えに合った保険を選択しましょう。
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働けない状態になったときに必要になるお金
もし、働けない状態になったときにはどんなお金が必要になるのでしょうか。必要な金額を想定して、不足する分を準備しておきたいものです。
生活費
まずは生活費を考えましょう。「収入の範囲でやりくりしているので、毎月の生活費としていくら使っているかがわからない」という人もいるかもしれません。
収入が減ってしまったから、生活のレベルを落とす、毎日節約して過ごすとなると、心的なストレスを感じてしまうこともあるでしょう。
生活に困らない金額はいくらなのかを確認して、生活費を使いすぎているのであれば、貯蓄に回すことも考えましょう。普段から大体の生活費がわかっていれば、万一が起きた時にも慌てずに生活できるでしょう。
住宅ローン(家賃)
住宅ローンや家賃は、生活費と違い、毎月の固定費です。その特徴を理解して万一に備えておくことが大切です。
住宅ローンを組んだ時に、団体信用生命保険(以下、団信)に加入していれば、死亡や高度障害状態(特約をつけている場合は3大疾病保障など)になった場合は、保険金で残りのローンが相殺されます。よって、住宅ローンの支払いの心配はありません。
ただし、高度障害を除いた病気やケガでの働けない状態は、団信の保険金支払い事由の対象外であるケースが多く、引き続き住宅ローンを支払い続ける必要があります。
金融機関によっては、就業不能状態が一定期間続くと支払いが免除になる場合もあるので、自分の場合はどうなっているのかを確認しておきましょう。
また、賃貸の家庭の住宅費は、毎月必ず発生する費用になります。その分の費用を貯蓄で準備しておくことが必要です。就業不能の状態になり、家賃が安いところに引っ越そうとしても、新たに敷金礼金や引越し代がかかることになります。
教育費
子どもがいる場合は、教育費がかかります。学校のお金以外にも、部活動費や塾代など細かな費用が必要になります。大学進学の際は、必要に応じて奨学金や教育ローンなどの利用の検討をしましょう。
医療費・介護費
就労できない状態ですので、医療費や介護費がかかることも想定しておかなければいけません。その他にも、介護ベッドやリフォーム費用など、まとまったお金が必要になるケースもあります。医療保険や介護保険の加入も検討しておくと安心です。
国や会社の保障制度
働けなくなったときには、いきなり収入がなくなるのかというと実はそうではありません。国や会社の保障を受けられる場合があります。ですが、働き方によって対象となる制度や保障の金額などが大きく異なるので、自分の該当する制度を知っておくことが大切です。
傷病手当金:健康保険加入者が該当
会社員などが、病気やケガで会社を3日以上続けて休んだ場合、4日目から最長1年6ヶ月間支給されます。1日あたりの支給金額は、「支給開始日以前12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×2/3」になります。
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障害年金:公的年金加入者、ただし加入している年金制度により内容が異なる
病気やケガが原因で障害がある状態になり、長期の治療が必要で一定の要件を満たした場合には、障害年金を受け取ることができます。
障害年金には、国民年金加入者が対象の障害基礎年金と、厚生年金加入者が対象の障害厚生年金があります。
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労災保険(労働者災害補償保険):すべての労働者
労災保険は、仕事中や通勤途中における病気やケガ、障害などにたいして給付が行われる制度です。自営業者の場合は、労災保険の対象外ですが、個人タクシーの運転手や大工さんなど一定の職業の場合には任意で加入できる特別加入制度があります。
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自営業の場合
自営業の場合は、会社員よりも保障の範囲が狭まるケースが少なくありません。傷害手当金や労災、障害厚生年金などは給付の対象外となります。
その分、自分で備えておくことを心がけましょう。また、自分で仕事を請け負っている人は、仕事ができなければ収入がない状態になります。そのため、収入に対しての準備は、手厚く考えておく必要があります。
特に、子どもがいる家庭は、教育費などのことも視野に入れて準備しておきましょう。
会社員・公務員の場合
会社員や公務員の人は、会社などの社会保険があるため、自分の会社・働き方なら、どれくらいカバーできるかを知っておく必要があります。
そして、社会保険でカバーできる分に加え、備えが必要であればその分を準備しましょう。「社会保険の保障も手厚いはずだから、なんとなく大丈夫だろう」と楽観的に考えず、しっかりと万が一のことを考えるようにしてくださいね。
自営業の人も、会社などにお勤めの人も、子どもがいる家庭は子どもが小さいうちの備えは手厚いに越したことはありません。死亡した場合のことを考えることと同時に、就業できない状態になった時の備えは十分にあるのかもしっかりと確認しておきましょう。
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おさらい
- 所得補償保険とは、病気やケガなどが原因で働けなくなってしまい、収入が減ったときの不足分をカバーする損害保険会社が取り扱っている保険です。
- 就業不能保険は所得補償保険と同じく、働けなくなったときの保障を確保するもので、収入保障保険は死亡時の遺族の保障を目的としています。
- 働き方によって、社会保障でカバーできる範囲が違うので、自分の場合はどこまでの備えが必要なのかを具体的に考えましょう。
- ※このコラムは、各保険の概要について紹介をしていおり、特定の保険会社名や商品名のない記載は一般的な保険商品に関する説明です。取扱商品、各保険の名称や保障内容は引受保険会社によって異なりますので、ご契約、ご加入にあたっては、必ず重要事項説明書や各保険のパンフレット等をお読みください。ご不明な点がある場合には当社までお問い合わせください。
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