もくじ
「いつまでに」「いくら」という目標を立てて着実にお金を貯めていきたいあなたへ
漫然と貯金する人は、あまりいませんよね。
「退職」「独立」「リフォーム」「移住」…数十年後にやってくるさまざまな未来を予測し、必要な資金を自分なりに見通す。そして「いつまでに、いくら貯めるぞ!」と目標を立てるはずです。
その目標がなく、毎月一定額を貯蓄に回すことは、相当意志が強くないと途中で心が折れてしまうのではないでしょうか。
だからといって、投資・運用で効率よくお金を増やそうとしても、忙しくて勉強する時間がないし、思うように増やせなかったときのリスクも気になる。やっぱり自分には、苦手だけれどもコツコツ貯めていくほうが合っている…。そんな人にとって、養老保険は検討の価値がある商品かもしれません。
養老保険では、満期を迎えると満期保険金が支払われます。もちろん養老保険は生命保険の一種ですから、保障があります。
万が一期間内に亡くなるということになれば、満期保険金と同額の死亡保険金が、保険契約成立の翌日であっても支払われます。
つまり、月々の保険料の支払いが将来への備えとなり、同時に万一の場合の保障も得られるわけです。以下、メリット・デメリット、他の保険との比較をしながら養老保険の特徴を説明していきますので、興味を持たれた方はぜひご一読ください。
養老保険は資産形成機能を備えた保険
改めて、養老保険の特徴について見ていきましょう。
養老保険は資産形成機能も兼ね備えた保険で、死亡保険金と満期保険金が同額という特徴があります。
契約期間内に被保険者が死亡した場合には、「死亡保険金」(または高度障害になった場合には「高度障害保険金」)が支払われます。何事もなく契約が満期を迎えた場合には、死亡保険金と同額の「満期保険金」が支払われるのです。
契約期間は被保険者が自由に設定でき、支払方法も契約時に保険料を全額払い込む「一括」と、月・年などのペースで定期的に払い込む「分割」があります。
資産形成を目的としていることが日本人の性向にマッチし、バブル期には生命保険の中でも主力商品とされていました。
現在では、保障の面では終身保険、資産運用の面では変額年金保険などが主力となっています。そのため、かつてほど一般的ではありませんが、資産形成という面では今もなお独自の魅力を持った商品です。
養老保険のメリット
まず養老保険の「メリット」から整理しましょう。万が一の場合には死亡保険金または高度障害保険金が、何事もなければ満期保険金が支払われることは上述のとおりです。
その特徴を踏まえて、メリットは、〈満期を自由に設定できる〉〈保険料の支払いを通して計画的な資産形成ができる〉という2点が挙げられます。
〈満期を自由に設定できる〉
養老保険には、「10年後のリフォーム」「20年後の独立」「30年後の退職」など、その人の将来に合わせて、保険期間の満期と満期保険金を自由に設定できるという特徴があります。
契約時の年齢にもよりますが、各社の商品を比較検討しながら、「自分は○○歳までに保険料を払い込む」「満期保険金を○○○万円にする」と計画を立てるのに適していると言えるでしょう。
〈保険料の支払いを通して計画的な貯金ができる〉
冒頭でもふれたように、自力で貯金を続けることは誰にとっても難しいこと。でも「保険料」として毎月支払っていくことにすれば、支払いを前提にして、家計のやり繰りを考えやすくなります。
支払いが滞れば保険が失効するリスクがありますし、途中で解約する(=解約返戻金を受け取る ※後述します)と、手元に戻ってくるお金が減ってしまいます。
家賃や光熱費を支払うように、自動的に口座から引き落とされる状態にしておくことで、計画的に資産形成がしやすくなるでしょう。
満期について
ここで満期について確認しておきます。
すでにおわかりのように、満期とは保険の契約期間が終了するときのことです。前項で満期が自由に設定できるメリットについて触れましたが、退職などで収入が減る(または無くなる)時期に設定しておくことが、満期設定の一つの基準と言えるでしょう。
また、満期で必ず受け取れる満期保険金を活用して、老後や独立、リフォームの資金などに充てることができます。
「満期保険金は受け取ったけれど、さしあたりそのお金を使う予定はない」という場合。また別の養老保険や終身保険に預け替える、若いうちに保険料を支払いながらコツコツ勉強していた資産運用を始めてみる…など、次の展開に活用することもいいでしょう。
養老保険の満期保険金の受け取り方法
満期になるとすぐに満期保険金が支払われるわけではなく、保険会社への申請が必要になります。
申請に必要な「満期保険金請求書」。一般的な手続き方法として、この書類が満期を迎える前々月頃に、保険会社から送られてきます。
必要項目に記入し、保険証券、身分証明書(免許証・パスポートなど公的な証明書のコピー)とともに保険会社に送付。その後、「満期保険金請求書」に記載されている期日に、満期保険金が支払われる…という流れです。
注意したいのは、満期保険金にかかる税金のこと。これは次項で説明します。
満期保険金と税金の関係
契約者が満期保険金を受け取った場合、所得税における「一時所得」として課税の対象となります。いくら課税されることになるのか、気になるところですよね。
所得税の計算式は、以下の通りです。
(満期保険金-払込み保険料の総額-特別控除50万円)×1/2
満期保険金から、今までに支払った保険料の総額と50万円を差し引いた金額が課税対象です。
計算式からわかるように、満期保険金と払込み保険料の総額との差が50万円以下であれば、特別控除50万円によってゼロまたはマイナスの金額となります。その場合、税金はかかりません。
ただし、満期保険金の受取人が契約者と違う場合は、注意が必要です。例えば契約者が夫で受取人が妻というパターンでは、贈与税の対象となります。
贈与税の基礎控除は110万円ですから、満期保険金がその金額内であれば税金はかかりません。
契約期間中であれば受取人の変更は簡単です。特別な事情がない場合には、契約者と受取人を同一人物にしておくことも、養老保険の効果的な活用に繋がります。
養老保険のデメリット
ここまで、いくつかの項目で注意すべき点に触れましたが、改めて養老保険のデメリットについて確認しましょう。
〈保険料が割高〉
養老保険は「保障のため」と「資産形成のため」という2つの目的があるので、その分保険料は割高になります。
しかし、「保障も資産形成も保険会社に一本化する」というシンプルな方法がとれるということも事実。受けとめ方は人それぞれですが、契約する前には慎重に検討しましょう。
〈一生涯の保障ではない〉
あらかじめ契約者自身が満期を設定するので、一生涯の保障ではありません。
〈インフレリスクがある〉
数十年かけて保険料を支払い続けたものの、満期を迎えた時の物価が契約当時よりも高騰し、満期保険金の価値が相対的に下がっている…そんな可能性があります。次項で詳しく触れますが、養老保険は見直しがしにくいため、インフレには対応しづらい保険です。
〈見直しがしにくい〉
別の保険に預け替えるなどの目的で、満期を迎える前に解約してしまうと、それまでに支払った保険料以下の解約返戻金しか戻ってこない。養老保険では、そんなケースが珍しくありません。
そのため解約しにくい、つまり見直しがしにくい保険であることもデメリットです。次項ではその解約返戻金について説明します。
契約期間が短くなればなるほど解約返戻金は少なくなる
解約返戻金とは、保険を解約した際に保険会社から払い戻されるお金のこと。解約するまでの期間によって返戻金額が異なります。
ここで注意したいのは、その期間が短ければ短いほど「返戻率」(保険等の支払い総額に対して返金されるお金の割合)が低くなることです。
資産形成という目的もある養老保険は、やはり満期まで契約を続けるほうが良いでしょう。
法人が契約するメリットは退職金の準備金としての活用
これまでずっと個人が契約した場合について説明してきましたが、法人が契約をした場合のメリット・デメリットについても押さえておきます。
先にデメリットについてですが、これは個人の場合と同様、〈保険料が割高〉〈一生涯の保障ではない〉〈インフレリスクがある〉〈見直しがしにくい〉という点が挙げられます。
メリットについては、法人の場合、従業員向けに満期保険金を、退職金の準備として活用することが可能になります。
法人では個人に比べて必要とされる資金の額がケタ違い。そこで保障の部分以上に、資産形成に適しているという点を重視し、養老保険に加入しているケースが多く見られます。
定期保険・学資保険・終身保険と養老保険との違いについて
最後に、他のさまざまな保険と比較して養老保険の特徴を捉え直しておきます。
〈定期保険〉
養老保険と同じように、定期保険にも保障期間があります。満期保険金はなく、一定期間のみの保障ですが、養老保険よりも少額の保険料で高額の保険金額を設定することができます。
〈学資保険〉
学資保険は高校や大学進学に間に合うように満期を設定するのが一般的です。構造上は養老保険と似ていますが、学資保険は子どもの教育資金に充てるものですから、契約者が自分自身の将来に合わせて期間や保険料を設定する養老保険とは、目的が異なっています。
〈終身保険〉
終身保険には満期がなく、したがって満期保険金もありません。そのかわり一生涯保障が続きます。
まずは自分自身の将来像をじっくり検討することから
いかがでしたでしょうか。養老保険の特徴からメリット・デメリット、注意すべき点などから、冒頭でお伝えしたようなタイプの人向けの保険であることが、ご理解いただけましたでしょうか。
くり返しになりますが、「投資・運用で効率よくお金を増やそうとしても、忙しくて勉強する時間がないし、思うように増やせなかったときのリスクも気になる。やっぱり自分には、苦手だけれどもコツコツ貯めていくほうが合っている」――そんな人にこそ、ご検討いただきたい保険であるということです。
まずはご自身の将来像をじっくり考えた上で、養老保険を選択肢の一つとして吟味していただけたら幸いです。
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おさらい
- 養老保険とは、資産形成機能を兼ね備えた保険であり、死亡保険金と満期保険金が同額という特徴があります。
- 養老保険のメリットは、満期を自由に設定できる、計画的な資産形成ができる等があります。
- 養老保険のデメリットは、保険料が割高、インフレリスクがある、見直しがしにくい等があります。