もくじ
相続放棄とは
誰かが亡くなると、その配偶者や子どもなど、相続をする権利を持つ法定相続人が遺産を相続します。しかし、相続人は相続する権利を放棄することができます。相続放棄をすると、その人ははじめから相続人ではなかったと見なされるようになります。今回は、相続放棄が必要になるケースや、その手続き方法について見ていきましょう。
相続放棄が必要になるケース
被相続人に借金などの負債があるときには、金銭や不動産などプラスの価値があるものだけでなく、マイナスの財産も相続し返済の義務を負うことになります。相続放棄をすれば、プラスの財産を相続する権利を失いますが、借金などマイナスの財産の相続もしないで済み、返済義務を負うことはありません。マイナスの財産がある以外の理由で相続放棄が考えられるケースとしては、家業を後継者に引き継ぐ時に、後継者が店舗や資産を保持するために、他の法定相続人が相続放棄をするといった場合などがあります。
相続放棄の手続き方法
相続放棄をするためには、家庭裁判所に申請をしなければいけません。手続きについておおよその流れを見ていきましょう。
① 相続放棄申述書など必要書類の準備
書類に必要事項を記入して、管轄の家庭裁判所に提出しに行くか、郵送で申し立てをします。 管轄の家庭裁判所は、被相続人が最後に住み、住民票登録をしていた地域の家庭裁判所です。
②家庭裁判所から照会書が届く
申し立て後、数日から2週間程度で、家庭裁判所から照会書が郵送されてきます。 そこには相続放棄の手続きは自分自身で行ったのか、相続の権利があることを知ったのはいつか、といった質問が記載されているので、回答を記入して返送をします。ただし、場合によっては家庭裁判所に出向き、質問に答えることもあります。
③家庭裁判所による審判
家庭裁判所が照会書の回答を審議して、問題がないということであれば、相続放棄の申し立てが受理されて「相続放棄申述受理通知書」という書類が送られてきます。これで相続放棄が成立します。この手続をするのは、法定相続人自身(法定相続人が未成年の場合や成年被後見人で自分では手続きをすることができないときには法定代理人が代行)となります。ただ法定相続人が忙しかったり、知識がなかったりというような不安がある時に、弁護士に代行してもらうこともできます。手続きに要する期間は1ヶ月程度が目安です。
相続放棄に必要な書類
相続放棄に必要な書類は次のようなものです。
・相続放棄申述書
これは家庭裁判所でもらってくるか、裁判所のサイトからテンプレートをダウンロードする事ができます。
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
被相続人がどこに住んできたのかという記録である、住民票除票や戸籍附票が必要になります。
・相続人の戸籍謄本
相続人が相続人であることを証明するために、戸籍謄本が必要になります。例えば、被相続人の孫への相続である場合、親(被相続人)が死亡したということが記載された戸籍謄本が必要になります。
被相続人の親・兄弟への相続では、被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本と配偶者(あるいは子)の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本というように、相続の権利が優先される人の死亡が記載された戸籍謄本を提出することで、申述人に相続の権利があることを明らかにする事ができます。また、手続きをするためには、手数料も必要です。現金ではなく収入印紙で支払うので、郵便局などで購入しておきましょう。相続放棄申述書を提出後に照会書が郵送されてくるので、そのために必要な送料や郵便切手も必要です。
相続放棄の手続きの注意点
一旦相続放棄が受理されると、基本的に取り消すことは出来ません。また、相続放棄ができる期限は決まっており、法定相続人が、被相続人が亡くなったことを知り、相続の権利があるということを「知った時点」から3ヶ月以内です。相続放棄をすると、すべての資産を受け取ることが出来ないと誤解してしまう人もいるようですが、生命保険金、遺族年金は受け取ることができます。
もしも、相続放棄の手続きを進めている途中で相続財産を一部でも使ってしまうと、借金などの債権者が訴えれば相続放棄の手続きが認められなくなります。相続する気持ちがないのであれば、被相続人の預金で借金を返済するなどの行為をしてはいけません。借金があるかどうかは調べなければわからない、というときには家庭裁判所に申し立てれば期限を延長することができる場合もあります。
円滑に手続きを進めたいならば専門家の知恵を借りることも一つの手です。
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おさらい
- 相続放棄は、借金などマイナスの遺産を相続することを防いだり、代々続く家業を残したりするために使われる制度です。
- 相続放棄をするには3ヶ月以内に手続きをすることが定められていますが、申し立てをすればこの期限を延長することができる場合もあります。