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返戻の読み方は?生命保険の解約返戻金と返戻率をわかりやすく解説

返戻の読み方は?生命保険の解約返戻金と返戻率をわかりやすく解説

この記事の早わかり要約

  • 解約返戻金は、保険を途中で解約したときに戻ってくるお金のことです。解約返戻金があるかどうかは、保険の種類や契約内容、保険料を支払った期間等により異なります。
  • 返戻率(%)は、「受け取る解約返戻金÷払い込んだ保険料総額×100」で表すことができます。100%を上回れば払い込んだ保険料よりも解約返戻金が多いということになります。
  • 解約返戻金は、教育資金・老後資金・住宅関連資金など、ライフスタイルに応じて活用することができますが、いくら戻ってくるのか、解約後の保障は充分か等を事前によく確認しておきましょう。

解約返戻金とは?まずは意味と読み方を確認

生命保険に加入するときに「そもそも何を基準に選べばいいか」を悩んでいる人や、専門用語が難しすぎると思っている人も多いのではないでしょうか。
今回は、保険に加入されている人にはぜひ知っておいていただきたい「解約返戻金」についてお話ししていきます。
解約返戻金とは「保険の契約を途中で解約した場合に、保険の契約者に払い戻すお金」のことで、「カイヤクヘンレイキン」と読みます。
解約返戻金があるタイプの保険は、死亡・高度障害状態等の保障だけではなく、戻ってくるお金で資産形成に役立てることができるという特徴もあります。
解約返戻金のポイントは2つです。

1. 解約返戻金は一部の保険のみ

どの保険でも解約返戻金があるわけではなく、解約返戻金は、「保険の種類」「契約内容」「加入期間」などに応じて決まっています。
解約返戻金がある保険は、主に、終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険などであり、最近では、一部の医療保険にも解約返戻金があるタイプの保険もあります。

2.解約返戻金は、支払った保険料の全額が戻ってくるわけではない

生命保険会社は、将来の保険金の支払いに備えて契約者から支払われている保険料の中から一定の金額を積み立てています。
保険を途中解約すると、保険会社の経費などを差し引いたり、場合によっては運用益が加味されたりした上で、契約者に解約返戻金が支払われます。
通常、早期に保険を解約すると解約返戻金は払い込んだ保険料の合計金額よりも少なくなるケースが大半です。
ただし、加入期間が長くなれば解約しても払込保険料を解約返戻金が上回るタイプも、外貨建て商品や投資性の強い一部の商品において見られます。

解約返戻金の3つのパターン

解約返戻金には3つのタイプがあります。このタイプによって、保険料に差が出てきます。
同じ保険金(死亡・高度障害・満期保険金など、保険会社から受取人に支払われるお金)で比較すると、保険料は下記の順になります。
従来型>低解約返戻金型>無解約返戻金型
それでは、それぞれの内容を確認していきましょう。

従来型

解約返戻金がある保険の中で基本となるタイプ。満期があるタイプでは、満期に近づけば近づくほど解約返戻金の返戻率が高くなります。終身保険などでは、保険料払込期間満了後も契約の年数が長くなると返戻率が高まることがあります。
戻ってくるお金を資産形成として活用しやすいタイプではありますが、昨今のマイナス金利等の影響で戻り率が高い商品は以前に比べ、かなり少なくなっています。

低解約返戻金型

保険料を支払っている期間の解約返戻金を、従来型の70%程度に抑えているタイプの保険です。
保険料を支払っている期間の解約返戻金は少なくなるかわりに、保険料を割安にしています。
早期解約してしまうと戻ってくるお金が少なくなってしまいますが、保険料の払込期間満了後は、解約返戻金の返戻率が上がるのが一般的です。
保険商品によっては、払込期間満了後に返戻率が100%近くになる保険もあるため、従来型同様、子どもの教育費準備など、資産形成目的として活用しやすい保険と言えます。

無解約返戻金型

いわゆる、掛け捨て保険です。解約しても解約返戻金がないタイプ。解約返戻金がないかわりに、保険料は解約返戻金があるタイプの保険と比較して割安です。

解約返戻金と返戻率

解約返戻金は、保険を解約したときに戻ってくるお金のことですが、解約返戻金と共に押さえておきたいのが“返戻率”という考え方です。

返戻率とは(返戻率の計算方法)

返戻率は、「保険料の払込金額に対して解約したときにどれだけお金がもどってくるか」をあらわしています。
返戻率が高いと解約した時にもどってくる解約返戻金が多くなります。払い込んだ保険料に対しての割合がわかるので、解約するときの目安となります。
計算式は、以下の通りです。
「返戻率(%)=受け取る解約返戻金÷払い込んだ保険料総額×100」
返戻率が100%以下なら、払い込んだ保険料よりも、解約返戻金の方が少なくなります。100%なら、払込保険料と解約返戻金は同額です。100%以上なら、払い込んだ保険料よりも解約返戻金の方が多くなります。

返戻率の高い保険を選ぶポイント

多くの人は、返戻率が低い保険よりも、返戻率が高い保険がいいと思うでしょう。
しかし、返戻率が高い保険は、一般的に保険料が高くなりがちです。返戻率も大切なことですが、あくまでも生命保険。
「万が一の保障が充分にあるか」、「保険料を払い続けることができるのか」などを考えておくことも大切です。

解約返戻金のある保険の見極め方

解約返戻金がある保険といっても、保険の種類によって、保険本来の強みである保障の内容が違います。
5種類の保険と解約返戻金について確認しておきましょう。

終身保険の解約返戻金

終身保険の特徴は、解約するまで続く“一生涯の死亡保障”。そのため満期保険金はありませんが、一般的に解約返戻金は保険の加入期間が長くなるにつれて増えていきます。

養老保険の解約返戻金

養老保険は、満期があるのがポイント。満期を迎える前に死亡すれば死亡保険金を受け取ることができ、満期時に生存していた場合は満期保険金を受け取ることができます。解約返戻金は、一般的に契約期間が長くなるほど返戻率は高くなります。

学資保険の解約返戻金

学資保険は、教育費準備を目的とした保険です。子どもの進学に合わせて、お祝い金や満期保険金を受け取ることができます。途中解約しても解約返戻金はありますが、払込保険料よりも少なくなるケースが多くなります。早期解約の場合は、解約返戻金がごくわずかになるケースもあります。

医療保険の解約返戻金

医療保険といえば、以前は掛け捨てが主流でしたが、最近では医療保険でも、解約返戻金があるタイプがあります。一般的に掛け捨てタイプよりも保険料は高めに設定されています。

個人年金保険の解約返戻金

老後資金として将来の年金を準備するための保険。途中で解約すると、一定金額を解約返戻金として受けとることができますが、短期で解約してしまうと支払った保険料よりも少ない解約返戻金しか受け取れません。

解約返戻金のあるなしの判断ポイント

「解約返戻金があるか、ないか」または「どれくらいの解約返戻金か」を判断するには、“設計書”と呼ばれる保険商品の説明資料を見ることでわかります。
設計書には、被保険者の属性に応じた保険内容が記載されています。資料の中に、“解約返戻金”や“返戻率”として、解約したときの金額などが記載されていれば、解約返戻金がある保険商品と判断できます。
また、保険商品によっては、パンフレットに「低解約返戻金」など解約返戻金に関する文言があります。
専門用語が多いものですので、「自分ではわからない」という人は、ファイナンシャルプランナーに相談してみると良いでしょう。
また、保険加入前の方は、加入しようとしている保険の種類や契約内容、解約返戻金の有無をしっかりと理解した上で保険加入の検討をしましょう。

解約返戻金の請求方法

請求方法

保険を途中で解約したいと思ったときにはどうすればいいのでしょうか。
請求の方法は、いたってシンプル。申込時のパンフレットや、保険証券などに保険会社のコールセンターの電話番号が書いてあります。
その電話番号に電話をして解約を申し出ましょう。そうすると、解約するための書類(解約請求書)が送られてきます。その用紙に、必要事項を記載し、押印をして返送しましょう。
内容に不備がなければ、書類到着後、1週間程度で解約返戻金のある場合は、指定の口座に入金されます。また、大抵の場合、保険会社のホームページに解約までの流れが書いてありますので、確認してみると良いでしょう。

注意したいこと

保険は一度解約すると、元の契約に戻すことはできません。解約するときには、下記のことを確認した上で、解約するのかどうかを考えてみてくださいね。
1. 加入している保険を解約したあとの保障は充分か
2. 自分が理解している内容と相違がないか
3. 病気の罹患等により、再加入できない可能性はないか(疾患によっては一定期間保険に加入できない、もしくは加入できないことがあります)

解約返戻金の受け取り時には税金はかかる?

支払った保険料よりも受け取った解約返戻金が50万円以上多かった場合、税金がかかるケースがあります。
解約返戻金を一時金として受け取った場合は「一時所得」として所得税の対象になります。
保険契約の場合の一時所得は、「解約返戻金―払込保険料の総額―50万円」です。ここから2分の1を掛けた金額を他の所得と合計し、所得税率に応じた税金が決まります。
たとえば、解約返戻金が600万円、払込保険料の総額が500万円の場合なら、「(600万円―500万円―50万円)×2分の1」の25万円が一時所得となります。他に所得があれば、この金額と合算します。
所得税は、1月1日~12月31日の期間で計算します。1年間に他の保険契約において保険金を受け取った場合は合算するため、複数の保険契約や他の一時所得があった場合などは注意が必要です。

解約返戻金の受け取りに確定申告は必要?

「解約返戻金の受け取り時には税金はかかる?」でお伝えした通り、差額に利益が出ていれば、一時所得として所得税の対象になります。
自営業の人など、所得を確定するために確定申告をしている人は確定申告が必要です。
給与所得者や年金収入者は、以下の条件に該当すれば確定申告は不要です。
1. 給与収入等の収入金額が2,000万円以下の給与所得者で、給与所得及び退職所得以外の所得が20万円以下の場合
2. 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下で、公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合
たとえば、給与収入が1,000万円の場合でも、解約返戻金の一時所得が20万円を超えている場合は確定申告が必要になります。
解約返戻金や満期保険金は、保険会社が1回の支払いで100万円を超える金額を支払った場合や、年金の支払い額が年間20万円を超える場合、税務署に「支払調書」が提出されます。
支払調書とは、「保険会社が保険金や満期保険金の受取人に対して、保険金等を支払った」という報告書です。
これにより、支払った側と受け取った側の申告に相違がないか国税庁がチェックするのです。条件にあてはまる場合は確定申告をすることを忘れないようにしてくださいね。
また、支払調書に関する改正が行われ、平成30(2018)年1月1日以降、契約者死亡による契約者変更をした場合も提出が義務づけられるようになりました。

解約返戻金の活用方法

解約返戻金はさまざまな使い方ができ、将来のライフイベントに活用することもできます。
保険は、あらかじめ解約した場合の返戻率や解約返戻金が設計書に記載されているため、将来の計画が立てやすいといった面もあります。その特徴を生かして解約返戻金を将来の貯蓄の一部として利用するのも良いでしょう。

パターン1.教育資金として

たとえば、子どもが小さいときから契約していた保険であれば解約した返戻金を学費として活用することができます。学費以外にも、留学費、結婚資金など、まとまった費用にあてることができます。

パターン2.老後資金や介護資金として

自分のために使いたいと思えば、解約して老後資金として利用することもできます。高齢になったときの状況に応じて、生活費や介護資金などへの使用を優先することもできます。

パターン3.リフォームや修繕積立金に活用する

住宅設備は年月がたつと劣化して修理にお金がかかるものです。自宅のリフォームだけでなく、収益物件を保有している人は修繕費用として活用することもできるでしょう。
このように、解約返戻金の使い道は自由です。ライフイベントに応じて活用することができます。

解約返戻金を利用する時の注意ポイント

1. 無理のない保険料を設定する

従来型も低解約返戻金型も、ある程度の期間、保険料を支払っていれば、払込保険料に対して一定の金額が返ってきます。解約した時にお金が戻ってくるとしても、どの保険も早期に解約すると払込保険料よりも解約返戻金の方がかなり少なくなります。
「解約しても少しは戻ってくるから、多めに支払っておこう」と甘く見積もるのではなく、保険本来の目的は保障であることを踏まえ、無理のない金額で保険料を設定しておくことが大切です。

2.解約すると保障がなくなる

保険を解約してしまうと、保障も一緒に消滅してしまいます。解約して新しく死亡保険に入り直す場合、その時点の年齢で保険料が計算されます。月々の支払額がかなり高くなることもありますので、あらかじめよく確認しておきましょう。
以上、解約返戻金について見てきました。保険は契約するときも解約するときも、今の自分の状況に合っているのか?ということをよく検討して決めることが大切です。

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おさらい

  • 解約返戻金は、保険を途中で解約したときに戻ってくるお金のことです。解約返戻金があるかどうかは、保険の種類や契約内容、保険料を支払った期間等により異なります。
  • 返戻率(%)は、「受け取る解約返戻金÷払い込んだ保険料総額×100」で表すことができます。100%を上回れば払い込んだ保険料よりも解約返戻金が多いということになります。
  • 解約返戻金は、教育資金・老後資金・住宅関連資金など、ライフスタイルに応じて活用することができますが、いくら戻ってくるのか、解約後の保障は充分か等を事前によく確認しておきましょう。

(最終更新日 : 2024年10月15日)

執筆者

荒木 千秋

ファイナンシャルプランナー、大阪電気通信大学金融経済学部特任講師

現在は、同大学の講師を中心としながら、お金に関する個別相談や、WEB媒体の執筆、女性向けセミナー等を開催。

メガバンクにて、富裕層や法人オーナーを対象とした投資相談業務に従事した経験により、金融商品の販売側と一般の投資者側の両方の視点に立ったお金の知識を伝えることをモットーにしている。

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